大判例

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山形家庭裁判所長井出張所 平成6年(家)239号・平6年(家)240号・平6年(家)241号

主文

申述人らの相続放棄の申述をいずれも却下する。

理由

1  一件記録及び申述人らに対する審問結果によれば、申述人菊川フサエは被相続人菊川善造(大正2年12月20日生・平成4年11月9日死亡)の妻、申述人永田典子及び同菊川重基は、それぞれ被相続人の長女及び二男であること、申述人らは、被相続人の死亡後間もなくその事実を認識したこと、被相続人は生前農業を営んでおり、所有していた農地が遺産となったこと、また、被相続人は、その長男菊川一基が代表取締役となっているオオトリ急送株式会社(東京都清瀬市所在)と大山信用金庫(埼玉県比企郡○○町所在)との間の消費貸借契約(平成元年3月29日貸付・金額1億1550万円)につき連帯保証人となっていたこと、オオトリ急送は、平成5年11月19日東京地方裁判所八王子支部に和議を申し立て、上記契約につき期限利益を喪失したこと、大山信用金庫は、同6年6月24日、オオトリ急送、上記契約の連帯保証人である一基及び善造の相続人である申述人らに対し、残元金等(合計1億206万5759円及び遅延損害金)の請求訴訟を浦和地方裁判所熊谷支部に提起したこと(同裁判所同年(ワ)第×××号)、訴状の送達を受け、初めて被相続人に保証債務のあったことを知った申述人らは、被相続人の死亡から3ヶ月以上経過した同年8月24日、当裁判所に本件申述を行ったことがそれぞれ認められる。

2  申述人らは、訴状が送達された平成6年7月24日ころまで被相続人に保証債務があったことを知らず、その後3ヶ月以内に相続放棄の申述を行ったのであるから、本件申述は有効なものとして受理されるべきであると主張する。

しかし、相続人が、相続開始の原因と法律上相続人となった事実を知った場合において、相続放棄の熟慮期間の起算点を繰り下げることができるのは、相続放棄をしなかったのが被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があるため、そのように信じるにつき相当な理由があると認められるときに限定されるものと解される(最高裁判所昭和59年4月27日判決民集38巻6号698頁)。

そして、一件記録並びに申述人ら及び参考人菊川一基に対する各審問結果によれば、被相続人の遺産はすべて長男一基が相続するものとされていたため、申述人らは、最初から自己が相続することは考えておらず、相続放棄手続自体も知らなかったことが認められるものの、他方、申述人らは、被相続人に遺産があることを知っていたこと、申述人フサエは被相続人と同居しており、申述人典子及び同重基は東京都に居住しているが、実家である同フサエ方との往来は保たれていたこと、申述人典子は被相続人がオオトリ急送の役員となっていたことを知っていたこと、申述人らは、遺産である不動産の名義を一基に移転するため、同人の求めに応じ、平成5年1月ころには相続分不存在証明書を作成したことの各事実が認められるのであり、熟慮期間の起算点を繰り下げうる場合に該当しないことは明らかであるといわざるをえない。

3  以上によれば、申述人らの本件申述は、いずれも熟慮期間を経過した不適法なものであるからこれを却下することとし、主文のとおり審判する。

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